毛髪成分を微粒子化―新発毛・育毛剤に応用も:筑波大学ほか
(2024年2月16日発表)
筑波大学と大学発ベンチャーの研究グループは2月16日、毛髪の主成分であるたんぱく質「ケラチン」を用いた新しい発毛・育毛剤の開発に見通しを得たと発表した。マウスを用いた実験で、直径百分の数ミリの微粒子にしたケラチンを水に分散させたマイクロ球体ゲルに発毛・育毛効果があることを初めて確認した。副作用がほとんどない発毛・育毛剤の有効成分として応用できると期待している。
皮膚には一般に外部からの攻撃を制限するバリア機能がある。これに対し筑波大の磯田 博子 教授(生命環境系)と山本 洋平 教授(数理物質系)は、最近の研究から発毛関連の物質を微粒子化すれば、このバリアを通過させて毛根を包む毛包に直接届けられる可能性があることに注目した。
そこで筑波大発ベンチャーのMED R&D(株)とマイキューテック(株)と共同で、羊毛から抽出した水溶性酸化ケラチンをマイクロ球体にして水中に分散させた寒天状のゲルを作り、毛をそったマウスの背中に塗布した。その結果、塗布後二日目には発毛し始めた。さらにその後も塗布を続けたところ、約二週間後には完全に毛が生えそろった。
この発毛・育毛のペースは、壮年性脱毛症に対する発毛・育毛効果や抜け毛予防効果が正式に認められている唯一の市販医薬であるミノキシジルと同等だったという。また、このマウスの背中の皮膚組織を遺伝子解析した結果、毛が生え変わる毛周期の調節や皮膚の状態を一定に保つ遺伝子の働きが明らかに増大していた。
磯田教授らは「ケラチンマイクロ球体ゲルに発毛・育毛効果があることを実証した初の例だ」とし、「ケラチンは毛髪や皮膚の主成分であることから、副作用がほとんどない発毛・育毛成分としての応用が期待できる」と話している。