マンゴーの苗木の衰弱・枯死の原因を特定―招かざる昆虫と共生菌が原因:名古屋大学/森林総合研究所ほか
(2024年2月14日発表)
名古屋大学大学院生命農学研究科の梶村 恒(かじむら ひさし)教授や(国)森林総合研究所、琉球大学などの共同研究グループは2月14日、世界的な果物の一つマンゴーの苗木に発生する衰弱・枯死の原因を特定することに成功したと発表した。森からの招かざる虫とその共生菌とが原因していることを沖縄本島のマンゴー農園で突き止めた。
熟したマンゴーは、甘いことで知られ、原産地のインドでは4千年以上も前から栽培され、今もインドが生産量世界一を保っている果実。日本でも沖縄や宮崎、鹿児島などで主にハウス栽培で作られている。
木は、セルロースなど難分解性の成分で構成されているため、ほとんどの動物は食べても自力で分解することができない。だが、昆虫は共生(一緒に生きること)する微生物の働きで木を分解する。
中には、「キクイムシ」と呼ばれる木を好んで食べる昆虫もいて、「養菌性キクイムシ」は“森林害虫”として世界各地で問題になっている。
養菌性キクイムシは、森林に生息する昆虫だが、近年は人里にも現れるようになって果樹園や庭園などの樹体に「穿孔(せんこう:孔)」を作って衰弱・枯死させてしまうケースが発生しており、今回の研究ではマンゴーの苗木でも同様の現象が起こった。
研究には、米国のミシガン州立大学、神戸大学も参加、先ず沖縄本島のマンゴーの枯死木からその問題の養菌性キクイムシの一種「ナンヨウキクイムシ」を発見した。更に、マンゴーの生立木に穿孔を作る雌(メス)の「ナンヨウキクイムシ」の成虫には、糸状菌の一種「フザリウム・クロシウム」が共生していることを見つけた。
そして、「ナンヨウキクイムシ」の共生菌によってマンゴーの樹体が水分を通さない通水不能に陥ってしまい、ついに故死に至ることを栽培実験によってはじめて証明した。この共生関係(組み合わせ)を見つけたのは世界でも今回が初めてといっている。
そこで、マンゴーに共生している糸状菌フザリウム・クロシウムを培養してそれをマンゴーの苗木10本に接種しそれが実際に共生菌としてどのように働くかを植物病原性を判定する接種実験で調べた。すると接種してからわずか数日で10本の苗木の内の半分の5本が衰弱し始め、4本が枯れる結果を得た。
こうした招かれざる虫とその共生菌の関係を調べ利用することは「樹木病害の防止対策立案や、人里への進出による害虫化の根源解明に貢献することが期待される」と研究グループは話している。
研究のイメージ図 ©梶村恒(名古屋大学)