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微生物集団に流れる電気の伝導度測定新手法を開発―微生物を用いた電池や電気化学センサーの開発に寄与:筑波大学ほか

(2024年2月26日発表)

 筑波大学の研究チームは2月26日、微生物のコミュニティにおける電気伝導度を測定する新手法を開発したと発表した。微生物を使った電池や電気化学センサーの開発をはじめ、微生物生態系と電気とのかかわりに関する研究などに役立つという。

 数千万匹、数億匹にのぼる多数の微生物が形成するコミュニティをバイオフィルムというが、近年、バイオフィルムの中には電気伝導性を有するものがあることが分かり、その解明や応用のための研究が進められている。

 しかし、電気伝導度の測定に必要な電極上のバイオフィルム形成プロセスが多くの微生物で困難なこと、また、電気伝導機構の解明のために微生物に遺伝子欠損操作を行うとバイオフィルム形成能力に変化が生じてしまうことなどから、バイオフィルムの電気伝導の解明は難しかった。

 研究グループは今回、電極上でのバイオフィルム形成プロセスを必要としない新しいバイオエレクトロニクスシステムを構築し、問題を解消した。

 具体的には、電極上にバイオフィルムを形成させる代わりに、寒天上にコロニーと呼ばれるバイオフィルムの一形態を形成し、コロニーを寒天ごと切り出して直接電極に押し当てるという方法を考案、それによって電気伝導度の測定を可能とした。

 コロニーは培養可能な微生物のほとんどで見られる形態であることから、これまで測定が困難だった多くの微生物の電気伝導度測定が可能になったという。

 この方法で測定された電気伝導度は電極上に形成された既報のバイオフィルムと同等であり、今後電気伝導度を測定するための基礎技術として利用できる可能性があるとしている。