肝がん予防のための患者層別化マーカーを発見―再発予防薬の治療応答性の予測に貢献:理化学研究所ほか
(2024年2月28日発表)
(国)理化学研究所と岐阜大学、東京慈恵会医科大学の国際共同研究グループは2月28日、MYCN(ミックエヌ)と呼ばれる血中因子が、世界初と期待される肝がん再発予防薬の治療効果を予測する患者層別化バイオマーカーであることを発見したと発表した。再発予防への治療薬の早期臨床応用に道を開く成果という。
今回発見されたマーカーの対象となる肝がん再発予防薬は、非環式レチノイドと呼ばれる、一般名ペレチノインと名付けられた薬物。非環式レチノイドは世界初の肝がん再発予防薬として期待されている日本発の薬で、これまでに3回の第Ⅱ/第Ⅲ相臨床試験が実施されたが、承認には至っていない。理由は、再発予防効果が低い、いわゆるノンレスポンダー(不応答者)がいることが臨床試験で分かり、それが実用化における課題になっている。
共同研究グループはこれまでの研究で、肝がん腫瘍組織中では がん遺伝子MYCNの発現が非がん部組織より有意に高く、MYCNの発現が高いほど肝がん再発率が高いことを明らかにした。また、非環式レチノイドが、MYCN陽性肝がん幹細胞を選択的に肝臓から除去することを示した。
これらを基に研究グループは、患者のMYCN発現量から非環式レチノイドの効果を投与前もしくは投与後の早い段階で予測できる可能性があると考え、今回、MYCN遺伝子発現量と相関のある血中MYCN量から、肝がん予後および非環式レチノイドの治療効果を予測することを目指した。
研究の結果、血中MYCNの定量に成功し、肝がんの長期予後の予測マーカーとして同定した。さらに、非環式レチノイドの第Ⅲ相臨床試験の研究により、血中MYCNは非環式レチノイドのレスポンダー患者の選別バイオマーカーとして有用であることを示した。
今後は、肝がん再発の抑制を目的とした世界初の薬剤承認を目指し、MYCNを患者層別マーカーとして非環式レチノイドの有効性を評価する治験に臨むとしている。
MYCNの測定・評価方法が確立し体外診断用医薬品として承認されれば、肝がんの再発や予後を予測する新たなバイオマーカーとして臨床現場で使用できるようになり、肝がん患者の予後改善に寄与することが期待できるとしている。