再生医療用の幹細胞培養―イオン液体で高効率化:物質・材料研究機構
(2024年2月28日発表)
(国)物質・材料研究機構は2月28日、イオン液体と呼ばれる特殊な液体の表面で再生医療に使われるヒト間葉系幹細胞を培養することに成功したと発表した。プラスチック皿を使う従来法に比べ、培養効率を大幅に引き上げることができる。イオン液体は細胞培養に用いた後で加熱、滅菌等をすることで繰り返し使用でき、プラスチックごみの削減にも役立つと期待している。
イオン液体はプラスとマイナスのイオンだけでできた液体で、例えば食塩の塩化ナトリウムを801℃以上の高温に加熱・溶融したものがその一つ。液体であるにもかかわらず蒸発も沸騰もしない性質を持っているが、物材研は今回、室温で溶融した状態のイオン液体を見出した。
今回、物材研はこのイオン液体の表面で再生医療に使われるヒト間葉系幹細胞を培養することに成功した。さらにイオン液体を構成するイオンの組み合わせによって液体表面に吸着するたんぱく質の状態が大きく変化し、細胞培養の効率に大きな影響を与える足場づくりに重要な役割を果たすことを突き止めた。
これまで再生医療に必要な幹細胞の培養にはプラスチックの皿が使われており、使用後に廃棄されていた。これに対し、今回の技術では細胞培養後にイオン液体を洗浄、加熱、乾燥、滅菌することで再利用できるため、プラスチックごみを出さずに済むという。
物材研は今後、イオン液体表面の幹細胞の分化状態を制御する技術を確立して幹細胞資源の培養効率向上を図るとともに、イオン液体の洗浄・滅菌プロセスの開発を進める。