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間伐によるスギ林の蒸散量減少は数年で回復―幹の深い部位を流れる樹液の流速増加がカギ:森林総合研究所

(2024年3月12日発表)

 (国)森林総合研究所などの研究グループは3月12日、間伐によるスギ林の蒸散量の減少が数年で元のレベルに戻ることを計測によって明らかにしたと発表した。間伐による蒸散量の減少は一時的であり、回復が早かったことは今後の森林管理の見直しに影響するとみられる。ほかに(国)国際農林水産業研究センター、秋田県林業研究研修センター、秋田県農林水産部、米国デラウエア大学などが参加した。

 森林が持つ大きな機能の一つに水源涵養(かんよう)効果がある。降雨の水分を吸って樹木内部や枝葉に保持し、洪水発生のピークを遅らせる。間伐によって水源涵養効果は小さくなるとみられていたが、蒸散量の減少がどのくらい続くかの実証的なデータはなかった。

 研究グループは秋田県大館市内のスギ林試験地で間伐前の2年間と間伐後3年間にわたる計5年間、一本一本の樹液の流速を計測し、蒸散量を調べた。

 根から吸収された水分は樹液流として葉に達し、空中に蒸散される。樹液の流れる部分を辺材(外側)、流れない部分を心材(内側)と呼ぶ。辺材の深部(心材側)と浅部(外皮側)にセンサーを挿入し採取したデータを統合・解析し、蒸散量の変化を調べた。

 スギ林の38%を間伐すると蒸散量は1年目に71%に減収したものの2年目には100%に、3年目には107%まで戻り、元の状態まで2〜3年で回復したことが明らかになった。密集した森林の日当たりの悪さが改善し、辺材の深部を流れる樹液の流速が著しく増加したことによる。

 これまでは間伐直後のデータだけで蒸散への影響を議論してきたが、水源涵養の機能に与える正確なデータは辺材深部を含む継続的なモニタリング計測によって初めて把握できた。

 このほか森林に降った雨が葉や枝に接触して大気中に蒸発する量や、地面から発生する蒸発量が間伐によってどのように変化するかを正確に捉え、総合的に解明する必要がある。

 さらに地球温暖化による夏場の高温現象や降雨の極端化現象が、森林管理にどんな影響をもたらすかも欠かせないとしている。