幼若ホルモンが成虫化を抑える仕組みを解明―成虫化遺伝子の働きをブロック:農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年1月17日 発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は1月17日、昆虫の幼若(ようじゃく)ホルモンが成虫化を抑える仕組みを解明したと発表した。この成果は新たな殺虫剤の開発や益虫の生育コントロールなどに役立つという。
幼若ホルモンは昆虫に特有なホルモンで、成長、生殖、休眠など様々な生理現象に関わっており、その一つとして、幼虫がサナギへと変態する際に、成虫化を抑えることにより昆虫の成長を正しくコントロールするという役目を果たしている。
サナギに変態する際に幼若ホルモンの働きを阻害すると、中途半端に成虫化した異常なサナギになったりすることが知られている。そこで、研究グループはどのような仕組みで幼若ホルモンが成虫化を抑え、幼虫からサナギへの成長を正しく制御しているのかをカイコを使って調べた。
その結果、サナギになる際に幼若ホルモンが働くと、幼若ホルモンによって作られるたんぱく質(Kr-h1)が、成虫になるために必要な成虫化遺伝子の近傍に結合し、成虫化遺伝子が働かないように作用することが判明、これによって幼虫からサナギに正常に変態していることがわかった。
サナギ化する際に幼若ホルモンによってKr-h1たんぱく質が作られる現象は多くの昆虫で観察されているため、カイコ以外の昆虫でも同じ仕組みで成虫化が抑制されていると考えられるという。
成虫化を抑える仕組みが解明されたことで、将来、害虫や益虫の発育をコントロールする技術の開発につながることが期待されるとしている。