植物工場の液温を3℃高めレタスの収量アップを実現―養分取り込みとアミノ酸代謝を促進、増産に期待:東京大学/理化学研究所ほか
(2024年4月12日発表)
東京大学大学院農学生命科学研究科の林 蒼太 大学院生と矢守 航 准教授らの研究グループは4月12日、植物工場の培養液を3℃高めるだけでレタスの生育が促進され、カロテノイドやビタミンCなどの機能性成分も増加したと発表した。植物工場の新たな栽培法として注目されている。理化学研究所、筑波大学などが加わった。
植物工場は都市型農業の代表的な施設で、食料不足や水資源枯渇、農業の担い手不足などの中で期待が高まっている。太陽光を使わず人工光源と水、養分を調整するだけで、天候や病害虫の影響を受けずに無農薬栽培ができる。
多段式の栽培棚を使うことから空間効率がよく安定的に作物栽培ができ、露地栽培よりはるかに高い単位面積あたりの収量を実現している。
研究グループはさらに作物の生産性を高めるために植物の環境応答の仕組みを調べ、培養液を室温よりも数℃高めることで植物の生育と品質が高まる可能性を見つけた。
レッドリーフレタスを使い、室温17℃、22℃、27℃、30℃の4条件下で培養液をそれぞれ3℃加温した場合と加温しないケースで栽培した。
植物の成長や代謝物への影響を検討するためにカルテノイドやビタミンCなどの機能性成分を調べ、ミネラル元素の取り込みを調べた。その結果4条件全てで培養液を3℃高めると植物の地上部の重量と地下部の重量がはっきりと増加することがわかった。
クロロフィル、カルテノイド、アスコルビン酸(ビタミンC)などの機能性成分が上昇していた。根と葉の両方には可溶性タンパクたんぱく量や各種ミネラルが増加し、特に葉のマグネシウムや鉄などのミネラルが増えていた。根ではグルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸の生成も伸びていた。
この結果から、培養液を3℃高めることで根からの養分の取り込みが促進され、根では各種アミノ酸量が増加して代謝が活性化し、レタスの生育と機能性成分が増えたことが明らかになったとしている。
今後、少ない資源とエネルギーの投入によって、植物工場で最大の収量と品質を獲得できるシステムを確立し、環境負荷を最小限に抑える技術を目指すことにしている。