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集団規模で変わる「今」の長さ―ライブ一体感にも影響か:筑波大学ほか

(2024年4月26日発表)

 筑波大学と長岡技術科学大学は4月26日、人が集団で行動するときに共有する「今」の長さ感覚は集団が大きくなるほど増加すると発表した。拍手音を聞いたときに、その拍手がそろっているかどうかを判断してもらう実験で明らかになった。ライブコンサートでの一体感との関係など、人間の時間感覚や集団特有のダイナミクスを明らかにできると期待している。

 人間は会話する際に、相手の口の動き「視覚」と声「聴覚」は同時に起きている現象と感じとっている。これは脳がある時間幅の中で起きているタイミングの異なる情報を、一つのイベントとして統合しているためだと考えられている。

 この時間幅は「時間統合窓」と呼ばれるが、研究グループはこれが集団行動をする際にどのように変化するかを詳しく調べた。実験では様々な条件下で人工的に作った拍手音を被験者に聞いてもらい、「拍手音がそろっているかどうか」について判断してもらった。

 その結果、拍手する人の数が多いほど、拍手がそろっていると感じていることが分かった。集団サイズが大きくなると拍手がそろっていると感じる時間幅は緩やかに大きくなる。

 一方、被験者に聞いてもらう拍手音が、①被験者に関係なく自動的(関与度低) ②一定のリズムでキーボードを叩くときだけ(関与度中) ③自分でキーを押したときだけ(関与度高)に出てきた場合に、拍手音が同時に起きていると感じる時間幅がどう変化するかも調べた。その結果、「自分の行為によって拍手音が鳴る」という因果関係が明確なときよりも因果関係が不明なときほど、時間幅は大きくなることが分かった。

 これらの結果から、研究グループは「集団が一つのエージェントとして振る舞うとき、個体間の時間感覚は柔軟に調整されていることが示唆された」として、様々な集団現象の説明に応用できると話している。