金属のように熱を通す絶縁体のゴムシートを開発―各種電子デバイスに応用可能な放熱シート実現:東京大学/産業技術総合研究所
(2024年5月15日発表)
東京大学と(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは5月15日、金属のように熱を通す絶縁体のゴムシートを開発したと発表した。スマートフォンをはじめとした各種電子デバイスの放熱シートとしての応用が期待されるという。
近年電子デバイスは小型化、高集積化、高機能化などに伴って電子部品からの発熱密度が拡大し続けている。このため熱を逃がし、部品の誤動作を防ぐ熱層間材と呼ばれる放熱シートが必要で、この熱層間材には、シート厚み方向の高い熱伝導性をはじめ、部品に密着する柔軟性、部品を電気的に保護する絶縁性が求められている。
しかし、金属並みの熱伝導率と、ゴムのような柔らかさ、電気絶縁性を兼ね備えた熱層間材はこれまで実現していない。
共同研究グループは今回、高い熱伝導率を示す電気絶縁体の窒化ホウ素化合物から成るフィラー(充填物)と、環動高分子のポリロタキサンを複合化し、シート厚み方向の熱伝導率が金属並みに高い絶縁体のゴムシートを作り出すことに成功した。
ポリロタキサンは直鎖高分子と、その上で動く環状分子から成る超分子の一種。環状分子を架橋点(かきょうてん)とするゴムは伸びやすくちぎれにくい性質を持つ。窒化ホウ素フィラーは板状の単結晶構造をし、板面に沿った方向に高い熱伝導性を持つため、ゴムと複合化する際にフィラーの板面が互いにそろうように配向させる必要がある。
研究グループはパルス交流電界を使い、短時間の印可で窒化ホウ素フィラーの配向度向上を可能にした。この結果、厚み方向の熱伝導率は11W/mKという金属並みの高さが認められた。また、シートのヤング率はゴムレベルの低い値を示し、電気的に絶縁体であることもわかった。
多くの電子デバイスの放熱への応用が期待できることから、今後企業と組んで実用化開発を進めたいとしている。