「ひまわり8号」のデータ使いスパコンで大雨の状況再現―関東・東北豪雨を例に降った位置や強度高い精度で示す:気象研究所ほか
(2017年1月17日発表)
国土交通省の気象庁気象研究所と琉球大学、(国)海洋研究開発機構(JAMSTEC)は1月17日、静止気象衛星「ひまわり8号」で観測した関東・東北豪雨を事例にしてスーパーコンピューター上でその再現実験(数値シミュレーション)を行ったところ大雨の位置や強度を精度よく再現できることが分かったと発表した。高度約3万6千kmの静止軌道を回っている「ひまわり8号」からの高密度・高頻度・高精度な観測データが台風や大雨の防災情報の改善に利用できることを示す成果だと研究グループはいっている。
集中豪雨や台風は、大きな被害をもたらすため、その発生や強度、位置、移動をできるだけ早くかつ正確に予報することが求められる。
それに応えるため天気予報の分野では、気象現象をコンピューターでシミュレーションする数値予報が行なわれている。数値予報は、風や気温などの時間変化をコンピューターで計算して将来の大気の状態を予測するというもので、決められた地域全域を予報期間によって一辺2km以上の格子状(四角)に区切って計算する手法がとられている。
その数値予報業務を気象庁は、1959年から大型コンピューターを導入して実施しているが、水平解像度と呼ばれる格子間隔は現在5kmのレベルにある。
それに対し、気象庁が開発し2014年にH-ⅡAロケットで打ち上げ2015年7月から運用を始めている静止気象衛星「ひまわり8号」の水平解像度は遥かに優れ0.5~2km。この高い水平解像度で日本周辺を2.5分毎という頻度で観測して風向、風速、海面水温を高い精度で得る機能を持っている。このため「ひまわり8号」を使うことによって集中豪雨や台風の予報精度の向上が期待されている。
今回の数値シミュレーションは、静止軌道を回る「ひまわり8号」から捉えた2015年9月に関東から東北を襲った記録的な大雨時の観測データを事例にして(国)理化学研究所の計算科学研究機構(兵庫・神戸市)にあるスーパーコンピューター「京(けい)」を使って行った。