サンゴの骨格形成の高精度な可視化に成功:琉球大学/沖縄工業高等専門学校/沖縄科学技術大学院大学/産業技術総合研究所
(2017年1月19日発表)
石灰化母液と海水に含まれる試薬の蛍光測定値を疑似カラー変換し、pH測定値と対応させた図。石灰化部位(初期ポリプの着底部)をガラス越しに直接観察することができる。
琉球大学は1月19日、(国)産業技術総合研究所などと共に、サンゴが骨格を作る際の細胞群の動きを世界で初めて詳細に捕らえることに成功したと発表した。地球温暖化などによって起こるサンゴの白化現象や海洋酸性化と、サンゴの生育阻害との関係の解明につながるものと期待している。研究グループには沖縄工業高等専門学校、沖縄科学技術大学院大学、岡山大学、などが参加した。
「海のオアシス」と呼ばれるサンゴは、炭酸カルシウムを主成分とする骨格を持っている。長い年月をかけて海中に複雑なサンゴ礁を作り、魚などの海洋生物に豊かな生息場所を提供している。ところがサンゴがどのようにして骨格を作るのか、その基本的な仕組みは分かっていなかった。
サンゴの骨格形成(石灰化)は、サンゴの組織と骨格とのはざまで、海水とは違う独特の組成をもった石灰化母液の中で進められる。この母液は弱アルカリ性で、pH(水素イオン濃度)が8.5~9.0と常にほぼ一定状態とみられていた。
研究グループは、生きたままのサンゴのpHの変化を調べることがカギになるとみて、「pHイメージング法」と「蛍光顕微鏡」を使い、サンゴの石灰化母液のpH濃度の変化を高精度に調べた。
サンゴを飼育している海水中(通常pH8.1)に塩酸を加えてpHを低下させると、数分後にサンゴが自発的に石灰化母液のpHを上昇させる現象を発見した。
これはサンゴが、環境によって変化する海水のpHを感知し、石灰化母液のpHを最適な弱アルカリ性に調整し、精巧な骨格形成をする仕組みが存在することを示している。