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複数のマイクロRNA同時検出―“RNA液滴コンピューター” 実現も:東京工業大学/京都大学iPS細胞研究所/東北大学/理化学研究所

(2024年6月7日発表)

 東京工業大学、(国)理化学研究所などの研究グループは6月7日、がんの診断などに使われる複数の遺伝物質「マイクロRNA」を同時に検出する技術を開発したと発表した。細胞内で液滴状になっているこの物質が、2種類の特定マイクロRNAに触れたときにだけ溶解する現象を利用して検出する。コンピューターの「AND演算」に相当するプロセスによって検出可能になるため、細胞内で働く“RNA液滴コンピューター”の実現にも貢献すると期待している。

 東工大と理研のほか京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、東北大学が参加した研究グループが取り組んだのは、がんの有無や治療の効果を調べる指標となる「バイオマーカー」として使われている複数のマイクロRNAを同時に検出する技術。

 マイクロRNAは21~25の塩基が連なったもので、生体内で遺伝子の働きを制御している。研究グループは今回、2種類の特定マイクロRNAのうち①両方とも閉じ込めた、②一方だけ閉じ込めた、③どちらも閉じ込めなかった、という液滴をそれぞれ作成、その後の変化を観察した。コンピューターでいえば[1,1]、[1,0]または[0,1]、[0,0]の入力に相当する。その結果、両方とも閉じ込めた[1,1]のときだけ液滴が溶解し、それ以外は溶解することはなかった。

 今回の結果について「RNA液滴によるAND演算の出力結果を高価な試薬やがんの診断などにバイオマーカーとして使われるマイクロRNAを、高価な機器や試薬に頼らないで検出することに成功した」と、研究グループは話している。