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湧水と大気の温度差を利用して発電―熱を電気に変換する熱電発電技術を用いて作製:産業技術総合研究所ほか  

(2024年6月10日発表)

 (国)産業技術総合研究所と茨城大学の共同研究グループは6月10日、湧水と大気の温度差を利用した湧水温度差発電を考案し、発電できることを実証したと発表した。熱を直接電気に変える熱電発電の技術を用いたもので、湧水の持つ熱エネルギーの活用、それによる環境計測、湧水保全などが期待できるという。

 湧水は、地表の温度変化の影響を受けにくく、水温は年間を通じて約15℃とほぼ一定。気温は季節によって大きく変化するので、温度差を電力に変換する熱電発電をここに適用すると、湧水に浸すだけで発電する「湧水温度差発電」がつくれる。

 研究グループは今回、ビスマス(Bi)テルル(Te)系熱電材料から成る熱電モジュールを円柱状の銅製熱電棒の周囲に配置した装置を作製した。銅棒の下部を湧水に浸し、湧水の温度を銅棒を介して熱電モジュールに導く。熱電モジュールの外周には、地表面付近の外気と効率的に熱交換を行うヒートシンクを取り付けてあり、大気温はヒートシンクを介して熱電モジュールに導かれる仕組み。

 2022年5月から翌年2月にかけて発電試験を行ったところ、1日の発電量の平均値は、5月3.1mW、8月4.2mW、11月1.1mW、1月14.5mWだった。湧水と大気の温度が等しくなる期間を除くと、ワイヤレス温度記録計が年間を通して安定に動作できる電力が得られることが示されたという。

 開発した湧水温度差発電装置は、水車のような可動部はなく、水の流れのない水路で発電でき、太陽光が届かない日陰や夜間も連続的に発電できる。この技術を用いれば、湧水の温度や気温だけではなく、湿度、圧力など様々な環境計測が可能になるという。

 今後、このシステムを進化させ、電池レスの遠隔モニタリングシステムを確立したいとしている。