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精度の高い日本域の季節予報の機械学習モデルを開発― 誤差を20〜40%改善し、1年先を精度良く予測:日本気象協会/筑波大学

(2024年6月11日発表)

 (一財)日本気象協会は、日本領域の月別の平均気温と降水量、日照時間について1年以上先まで精度高く予測する機械学習モデルを開発したと6月11日に発表した。筑波大学生命環境系の植田 宏昭 教授(気候学、気象学)による助言、指導を受け、特許も共同で出願した。これまでと比べて月別の予測誤差が20〜40%改善した。

 季節予報は、月平均や季節平均の天候を予測するもので、産業の生産計画などに使われる。しかし日本列島のある中緯度帯では極端な高温や低温、多雨や日照不足の予測が難しく、実用が進まなかった。

 1か月以上先の長期予報には、海洋の変動と大気の変動による複雑な相互作用を考慮した「大気海洋結合モデル」が使われる。このモデルによる予測精度は、中緯度より熱帯域の方が高くなる。

 植田教授によると、熱帯の海面から上空に至る熱量、水分、運動量は大気循環形成に大きく寄与する。この積雲対流活動を指標にすることで、東アジアの気温、降水量、西太平洋の台風の発生などとの高い関連が得られるという。

 植田教授の協力で、日本の天候と関わりの深い熱帯・亜熱帯域の対流活動や海面水温を含めた機械学習による季節予報の手法を開発した。

 熱帯・亜熱帯の対流活動(OLR)と海面水温(SST)について、日本の月平均気温や日照時間、降水量との間に明確な相関を持つエリアが複数あり、特に対流活動に高い相関が見つかった。対流活動の予測精度は、中緯度帯より予測精度が高いこともわかった。

 そこで、大気海洋結合モデルによる対流活動の予測値をエリアごとに平均化して指標化し、月別、6つのエリア別(北日本、東日本、西日本をそれぞれ太平洋側と日本海側に分ける)の平均気温、日照時間、降水量を最も精度高く予測できる指標を、機械学習で抽出し、予測式を作った。

 その結果、日本の真上の気象予測値から予想した従来の手法と比べると、新たな熱帯・亜熱帯の対流活動や海面水温の解析値、予測値を指標に観測データを学習させる予測式の方が、誤差の改善が見られた。

 さらに対流活動(OLR)と海面水温(SST)を予測式に加えたところ、従来よりも誤差が20%から40%改善し、1年先を超えて有意な相関を持つ予報が可能となった。

 この予測は、夏のオホーツク海高気圧や冬の北極振動などの大気の内部変動に起因する現象が強い場合や、統計に当てはまらない事象が発生した場合には誤差が大きくなる。今後、予測の下振れリスクや上振れリスクの原因を調べ、実用性を向上させていく。