今より5割も多収の大豆を開発―米国の品種と日本の品種の交配で実現:農業・食品産業技術総合研究機構
(2024年6月11日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は6月11日、大豆を今より5割も多く収穫できる高収量の新品種を開発することに成功したと発表した。米国の品種と日本で広く栽培されている品種とを人工交配することで得た。名称を「そらたかく」という。東海地域から九州地域にかけてが栽培適地で、兵庫県と福岡県で行った現地栽培試験で今の代表的な品種より54%も多収なことを実証した。農研機構は、東海から九州地域を中心に普及を進めている。
大豆は油脂の原料であるほか、味噌や豆腐、納豆など日本の伝統的な食品に加工される重要な作物。農林水産省のホームページによると、2022年度の日本の大豆の年間需要量は約390万tで、その約70%は油用、約100万tが豆腐などの食品に利用され、増加の傾向にある。
だが、大豆の自給率は低く、多くを輸入に依存しているのが実態。
このため、国は食料安全保障の観点から2000年に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」で2030年度の大豆の生産努力目標を34万tにまで高めようという方針を打ち出している。
しかし、現用の国産大豆は栽培面積当たりの収量が低いという決定的な泣き所を抱えている。米国の大豆の10a(アール、1アールは100㎡)当たりの平均単収(平均収量)は高く、340㎏と米農務省から発表されているが、日本の平均単収は米国の半分、168㎏にすぎない。
新品種はその課題に向けての朗報といえ、現用の品種「たつまろ」を種子親、米国の品種「Santee」を花粉親とする組み合わせによる人工交配で作った。
試験は、作付面積が全国トップの品種「フクユタカ」と新品種とを対比できるようにして約30aの栽培を兵庫県と福岡県で行った。
その結果、新品種「そらたかく」の収量は10a当たり406㎏を記録、平均収量が作付面積全国トップの「フクユタカ」を54%も上回った。
品質的にも大豆の主用途である豆腐への加工特性が優れていると検査機関から評価された。
大豆と麦の二毛作に適していることも分かった。
名称を「そらたかく」としたのは「空に向かってまっすぐ高く伸びる姿をイメージして名付けた」という。