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市民参加型でアブラゼミの初鳴き調査を実施―前年の夏から初冬の気温が高いと初鳴きが早まる:国立環境研究所ほか

(2024年6月24日発表)

 (国)国立環境研究所 気候変動適応センターと名城大学農学部の研究グループは6月24日、市民、学校、企業などの参加で実施してきたアブラゼミの初鳴きの要因分析を発表した。前年の夏から初冬にかけての気温が高いと、初鳴きが早まる可能性が高くなるとしている。

 植物の開花日や虫の初鳴き日などの生物の季節的な反応は生物季節現象(フェノロジー)と呼ばれ、農業や文化を支える重要な要素になっている。

 気象庁は1953年から全国で観測してきたものの2021年に縮小したのを受けて、国立環境研究所気候変動適応センターが市民参加によるモニタリングを受け継いだ。

 動植物に関心のある全国の市民、企業の有志、学校の部活動、地域の研究機関、公園管理者など、個人や団体の約500人が参加し、採取した記録は気候変動センターが集約し、解析した。

 研究グループは中でも調査が充実している「アブラゼミの初鳴き日」に注目し、初鳴きに影響を与える環境要因を探った。

 気象庁による全国47観測地点での約50年間の観測記録と、2021年以降の112人の市民調査員による115ヶ所、160件の記録を分析した。

 調査地点に近い気象台の日平均の気温、湿度、風速、全天日射量、日降水量を基に、1,369通りの統計モデルを比較し、よく当てはまるモデルの気象要因を解析した。

 その結果、気温の効果が顕著に大きく影響しており、初鳴き日は322日前から221日前の気温と強い関連性が見つかった。これは前年の盛夏から初冬の気温にあたる。

 長期的なデータをみると盛夏から初冬の気温は上昇する傾向にあり、アブラゼミの初鳴き日も早まる傾向にあった。

 初鳴き日の早期化は、気温の経年的な上昇、つまり温暖化の影響であるとの仮説を裏付ける形になった。