ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が宇宙初期4億6千万年の球状星団を発見―球状星団の誕生やブラックホールの合体など初期宇宙の新現象の発見にも期待:早稲田大学/千葉大学/名古屋大学/筑波大学
(2024年7月4日発表)
米国航空宇宙局(NASA)の「ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡」が捉えた画像から、初期宇宙の銀河の中に5つの星団を発見したと、早稲田大学、千葉大学、名古屋大学、筑波大学などの国際チームが7月4日発表した。初期宇宙での球状星団の誕生やブラックホール形成の解明につながると期待される。
私たちの天の川銀河には数十万から数百万個の恒星が密集した球状星団がある。宇宙初期に生まれたいわば化石のような天体だが、その成り立ちはわかっていない。
宇宙創生のビッグバンは約138億年前に起きたとされる。国際チームは今回、「コズミック・ジェムズ・アーク(宇宙宝石の円弧)」と呼ばれる銀河の中に、5つの極めてコンパクトな星団を発見した。ビッグバンから4億6千万年しか経っていない宇宙の若い時期にあたり、これまで見つかった中で最も遠い星団になる。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、NASAが2021年12月に打ち上げた巨大な宇宙望遠鏡で、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機。
集光面積はハッブル宇宙望遠鏡の約10倍あり、宇宙の広範囲を観測できると共に超新星の出す波長の長い光にも敏感に反応するような高感度性能を持っている。この2年半の観測データからは、宇宙のごく小さな領域でたくさんの超新星などが見つかっている。
光が巨大な質量の銀河団のそばを通過するとき重力の作用によって光の進路が曲げられる特異な現象がある。それによって銀河が引き伸ばされて明るく見えたり複数の像に分裂して見えたりする。
今回の観測では重力レンズ効果によって長辺が約100倍に拡大して観測された。こうした宇宙望遠鏡の高感度性能と重力レンズ効果などによって、これまで考えられないような宇宙現象の発見が期待されている。
例えばコズミック・ジェームズ・アーク星団は非常に高密度で密集している。これは星団の内部で特異な物理現象が起きていることが考えられる。銀河の進化過程でブラックホールの合体頻度が高まり、より大きなブラックホールが作られる、との大胆な仮説を裏付るような可能性もあるとみている。