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ウイルス病に強いメロンを開発―「退緑黄化病」に抵抗性示す世界で初の品種:農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2024年7月9日発表)

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新品種「アールスアポロン」の果実 ©農研機構

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構と(株)萩原農場生産研究所(萩原農場)は7月9日、共同でウイルス病にかかり難いメロンの新品種を開発したと発表した。ウイルスによって葉全体が黄色くなってメロンの品質が低下してしまうウイルス病「退緑黄化病(たいりょくおうかびょう)」になるのを防いで良質のメロンを安定して生産できる。退緑黄化病抵抗性メロンの開発は世界で初めてという。4品種を開発した。

 メロンは、主要な果実的野菜で一般的には高価なくだものとして人気があり、国内の年間産出額は2022年時点で655億円を記録しているが、産地で大きな問題になっているのが今回の退緑黄化病。

 このウイルス病は、タバココナジラミと呼ばれる体長がわずか1mm前後というごく小さな虫によって伝播される。

 世界中に分布している作物の重要害虫で、メロンの退緑黄化病はそのタバココナジラミが持っているCCYVというウイルスによって生じ、葉の表面に緑色がうすくなった(退緑)小さな斑点ができ、その後葉全体が黄色(黄化)になってメロンの最も重要な糖度と果実重が低下してしまう。

 日本では2004年に初めてそのCCYVの発生が報告されその後各メロン産地に広まり、今ではメロンだけでなくスイカやキュウリにまで感染が拡がっている。

 しかし、ウイルスを運ぶ害虫のタバココナジラミは小さいため、ハウス内への侵入を完全に防ぐことが難しく防除の壁にぶつかっている。

 このため、退緑黄化病に抵抗性を持つメロンの開発が強く求められている。

 開発した新メロンは「アールスアポロン」と呼び、農研機構の開発種と萩原農場の開発種とを交配して作った。

 4品種は、それぞれ栽培に適した時期が異なっていて ①6~7月に播種して9~10月に収穫する夏系、②7~8月に播種して10~11月に収穫する春秋系、③8~9月に播種して11~12月に収穫する早春晩秋系、④9月に播種して12~1月に収穫する秋冬系、とほぼ1年を通して世界初の退緑黄化病抵抗性メロンをハウスで安定して作れるという。

 研究ではDNA(デオキシリボ核酸)配列の違いを見つけ出すDNAマーカー(標識)を使って退緑黄化病抵抗性を持っているかどうかどうかの選別を幼苗の段階で迅速に行うことにも成功している。

 農研機構では「果実(メロン)の品質を低下させる退緑黄化病が発生している地域においても高品質なメロンの安定生産が期待される」と話している。

メロン生産者ほ場(退緑黄化病発生地域)での試作のようす
(左) 退緑黄化病による葉の黄化が少ない新品種「アールスアポロン」と、黄化が激しい「罹病性*品種(*りびょうせい、病気にかかりやすい性質。)」。
(右)「アールスアポロン」の果実と、果実が小さくネット形成も悪い「罹病性品種」の果実。
(画像提供:農研機構)