ナノ炭素材料の高純度な薄膜を光照射で簡便に作成―薄膜化とパターニング工程が大幅に短縮へ:産業技術総合研究所
(2017年1月26日発表)
(国)産業技術総合研究所は1月26日、ナノ炭素材料の高純度な薄膜を光照射で簡便に形成する技術を開発したと発表した。薄膜化とパターニングの工程を大幅に短縮できるため、次世代電子デバイスの開発促進が期待されるという。
単層カーボンナノチューブ(単層CNT)に代表されるナノ炭素材料を二次電池やキャパシタなどの電子デバイスに応用する研究が精力的に進められている。その製法として、分散剤を用いてナノ炭素材料を溶媒中に分散させ、基板上に薄膜を形成するウエットプロセスが注目されている。
ただ、このプロセスは導電特性などを低下させる要因となる分散剤の除去に煩雑な工程を必要とし、これが応用開発のネックになっていた。
研究グループは今回、ナノ炭素材料に選択的に吸着し、紫外光を当てると脱着する特殊な分散剤を開発し、この問題を解決した。
この分散剤とナノ炭素材料を炭酸プロピレンなどの溶媒中で混合すると、ナノ炭素材料が均一に分散する。この分散液をPET樹脂の基板上に塗布し、基板の下からフォトマスクを通して20秒程度紫外LED光を照射すると、光が当たった部分にだけナノ炭素材料が析出し薄膜が形成される。
検査の結果、薄膜中には分散剤がほとんど含まれないことが確認された。分散液の濃度や光照射時間を変えると膜厚を制御できることもわかった。
従来の製法では曲面や凹凸面での薄膜化は困難だったが、新技術では様々な素材や形状の基板上で単層カーボンナノチューブ薄膜を作製でき、柔軟で軽量のデバイス開発が期待できるという。
今後、より均質な膜の作製や基板との密着性の向上、大面積化などを進め、新技術の実用化を目指したいとしている。