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無限に流れるデータをリアルタイムに圧縮・復元可能に―次世代データ伝送方式として消費電力の大幅削減に寄与:筑波大学ほか

(2024年7月19日発表)

 筑波大学と(国)科学技術振興機構(JST)は7月19日、映像など無限に流れるデータを一度通すだけで、頻出するデータのパターンを自動的に見つけて圧縮するとともに、完全に復元可能な新技術を開発したと発表した。従来方式より圧縮率が10~30%高く、次世代データ伝送方式として消費電力の大幅な削減が期待されるという。

 現代の情報通信技術では、映像などのデジタルデータを計算・伝送する速度を高めることの重要性が増している。例えば、監視カメラによる人物特定では、映像の伝送、人工知能(AI)での認識、結果の伝達といった一連の流れを高速化する技術が求められている。

 この過程で時間がかかるのはAIによるデータ計算よりもデータの移動。このため、元データの情報の高精細さを損なわずにデータ量を可能な限り削減し、通信時間を減らす手法が望まれている。

 従来のデータ圧縮技術では、データを有限なある程度のまとまりとして記録し、それを圧縮していたため、データを記録するメモリーやデータを処理するプロセッサーが不可欠だった。従って、終わりなく連綿(れんめん)と流れるデータを圧縮する場合、圧縮機構は大がかりになる一方、リアルタイムの圧縮はできないという問題があった。

 研究チームは今回、データストリームを圧縮器に一度通すだけで、頻出するデータパターンを自動的に探し出し、最小で1ビットにまで圧縮できる新技術を開発した。しかも、どのようなデータでもリアルタイムに完全に元に戻すことができる。

 これまでの技術では、一つの単位データを1ビットにまで圧縮することはできたが、新方式では複数の単位データをまとめて1ビットにまで圧縮できる。これにより、従来方式に比べ圧縮効率が10~30%向上した。

 また、今回の新技術では、プロセッサーやメモリーなどを利用することなく、高速でコンパクトなデータ圧縮機能のハードウエア化が容易にできるという特色がある。半導体チップに今回の成果を適用し、AIに実装すれば、データの量の削減によるさらなる高速化、データの移動経路における省電力化が図れ、次世代データ伝送方式としての展開が期待されるとしている。