[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

自分らしさの発揮―組織の持続的成長に貢献:筑波大学

(2024年7月22日発表)

 個人の自分らしさを尊重して意思決定をする組織ほど高いパフォーマンスを発揮する。筑波大学は7月22日、さまざまな業種の企業組織を対象に実施したアンケート調査からこのような結果を得たと発表した。新卒一括採用、終身雇用など同質性が高いといわれる日本企業のような組織でも、個々人の意見や信念、価値観に真摯に耳を傾けて意思決定をする組織の方が、より高いパフォーマンスを発揮して組織の持続的成長につながるとしている。

 日本企業はこれまで日本的経営による社員の同質化傾向が指摘されている。最近は性別や年齢、国籍など多様な人材を雇用するダイバーシティ重視の傾向が強まっているが、同時に個々人の知識やスキル、視点や価値観など目に見えない「認知ダイバーシティ」と呼ばれる多様性の重要性も指摘されている。

 そこで筑波大の藤 桂 准教授の研究グループは、この認知ダイバーシティがある下で仕事のパフォーマンスがどう変わるのか、パフォーマンスを上げるにはどうすればいいか、を詳しく調べた。具体的には、サービス業や金融業、製造業、IT、金融保険業、サービス業、卸小売業などさまざまな業種の企業組織チームにアンケート調査を実施、年齢や性別の異なる375人から得られた回答を分析した。

 その結果、チームのリーダーが、①自分の信念や価値観、強み、弱みなどの自己認識に基づいて行動し、②チームの構成員の自分らしさを尊重し、その意見や思いを十分に出せるよう促して真摯に耳を傾け、多様な視点を取り入れて最善の意思決定をする、というオーセンティック・リーダーシップと呼ばれる指導力を発揮することが、チームレベルでも個人レベルでも仕事のパフォーマンスを上げるのに重要なことが分かったという。

 研究グループは「オーセンティック・リーダーシップは社会的・文化的な環境の違いに関わらず有効であることが示唆された」と結論付けている。