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光触媒による水分解の電極表面反応を直接観察―酸素発生電極の性能向上に寄与へ:高エネルギー加速器研究機構

(2024年7月25日発表)

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)は7月25日、光触媒による水分解反応において、酸素発生電極で起きる反応過程を直接観察できる手法を世界で初めて開発したと発表した。酸素発生電極の性能向上への寄与が期待されるという。

 太陽光を用いて水を水素と酸素に分解できる半導体光触媒は、次世代エネルギー源の一つと目されている。

 この半導体光触媒はp型半導体材料でできた水素発生電極と、n型半導体材料でできた酸素発生電極から成るが、酸素発生電極は水素発生電極に比べて反応速度が遅く、システムの効率を上げるには酸素発生電極の性能向上が必須とされている。

 ただ、性能を上げようにも、電極上での酸素発生の反応過程には不明な点が多く、特に、固液界面で生成する化学種の種類や、反応の進行の仕方によって特性が左右されると考えられている。

 研究チームは今回、モデル触媒として酸化チタンに着目、「波長分散型(エネルギー一括測定型)軟X線吸収分光法」と呼ばれる手法を用い、酸化チタンの固液界面における酸素発生反応の観察を試みた。

 この手法は、様々なエネルギーを持つ軟X線の吸収の大きさを一度に測定でき、化学反応中に現れる化学種の時間変化をリアルタイムで観察できる。

 実験では電位をスキャンしながら固液界面の触媒反応時の電極/電解質溶液界面に生じる化学種をリアルタイムかつオペランド測定することで、触媒電極表面近傍に吸着した中間体や発生した酸素を観察することに成功した。

 光照射しているとき、軟X線のエネルギーの533.8eV付近にピークがみられ、電位のスキャンとともにその強度が変化。このピークは光照射していないときにはみられなかったため、水分解による触媒表面近傍に現れる酸素種に起因することが示唆され、電位とともにその存在量が変化することが示されたという。

 今回の実験で、水分解時の酸素発生電極の表面近傍に生じた中間体や酸素を、反応させながら観測することができるようになった。これは、その反応がどのように触媒活性に影響を与えるかを明らかにすることに繋がるとしている。