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病原性の糖鎖をつくるアノマー反転型糖転移反応を発見―酵素を利用した糖鎖合成の可能性大きく開かれる:東京理科大学/農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2024年8月1日発表)

 東京理科大学と(国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、新潟大学の共同研究グループは8月1日、一部分子の結合構造がアノマー反転型と呼ばれるタイプの糖質加水分解酵素が、病原性に必須な糖鎖を作ることを見出したと発表した。

 この合成反応は、これまでアノマー保持型と呼ばれるタイプの糖質加水分解酵素でしか見つかっていなかったもので、糖質加水分解酵素研究の100年以上の歴史のなかで初めての成果という。酵素を利用した糖鎖合成の可能性を大きく飛躍させる発見としている。

 アノマーは立体異性体の関係を示す用語。糖質加水分解酵素群は、反応前後でアノマー型が保持されるか反転するかで、アノマー保持型と反転型に大別される。糖の基質に水が作用する加水分解反応ではアノマー保持型、反転型があるが、糖鎖が作用する糖転移反応ではこれまでアノマー保持型しか見つかっていなかった。

 今回研究グループは、植物病原菌のXccの病原性発現に重要な糖鎖CβG16αの生合成に関連する酵素について研究を行った。

 その結果、Xcc由来の糖質加水分解酵素がユニークな糖転移反応により、病原性に必須な糖鎖CβG16αを合成することを見出した。また、立体構造の解析により、この酵素がβ-グリコシド結合をα-グリコシド結合に変換して糖鎖の転移を行うメカニズムが確認された。

 アノマー反転型にも糖鎖転移反応が存在することを初めて示したもので、酵素を利用した糖鎖利用の可能性を大きく広げた。将来的にはこの酵素自体、全く新しいコンセプトの農薬の阻害ターゲットとして期待されるとしている。