安全性と信頼性が高い全固体リチウム二次電池を開発―電解質に酸化物単結晶を用いて実現:産業技術総合研究所
(2017年2月1日発表)
(国)産業技術総合研究所は2月1日、安全性と信頼性が高い酸化物系の全固体リチウム二次電池を開発したと発表した。電解質に非可燃性のガーネット型酸化物の単結晶を用いたもので、今後量産性に優れた単結晶育成技術などを確立し、高い安全性・信頼性が求められる医療用分野などでの実用化を目指したいとしている。
様々な小型・大型機器類に幅広く用いられているリチウム二次電池については現在、可燃性の電解液に代わり、発火の恐れのない新たな電解質材料の開発が進んでいる。素材としての安定性が高い酸化物系の無機固体電解質の開発はその一つだが、これまでは有機電解液に比べてリチウムイオンの導電率が低く、稠密(ちゅうみつ)な焼結体が得られず金属リチウムの貫通による短絡(ショート)が起こる、電極との接合強度に欠ける、などの課題を抱えていた。
研究グループは今回、ガーネット型と呼ばれる結晶構造を持つ酸化物の単結晶成長に成功、これによって得られた単結晶を用いて固体電解質を作製した。
その結果、従来の酸化物焼結体よりも稠密で、金属リチウムの貫通は起こらず、大電流でも内部短絡はなく信頼性が高いことがわかった。また、リチウムイオン導電率は有機電解液と同等以上で、酸化物系固体電解質材料では現在世界最高の値であった。
さらに産総研独自の常温製膜技術であるエアロゾルデポジション(AD法)を用いて、正極を固体電解質表面に作成し、強固に接合した電極-電解質界面を実現した。
開発した全固体リチウム二次電池はこれまでの全固体型より安全性と信頼性が高いことから、今後関連企業との連携を通して実用化につなげたいとしている。