強磁場・極低温下の電子と核スピンの相互作用とらえる―電子の特殊な状態である「分数量子ホール液体」にメス:東北大学/物質・材料研究機構
(2017年2月3日発表)
東北大学と(国)物質・材料研究機構は2月3日、半導体を構成する原子核のスピンの状態を特殊な顕微鏡などを使って観察することに成功したと発表した。「分数量子ホール液体」と名付けられた電子の特異な状態と原子核のもつスピン(核スピン)との相互作用を解明する重要な成果が得られたという。
分数量子ホール液体はある環境下の電子が液体のように振る舞う現象。半導体中の電子は通常、気体中の分子のようにそれぞれが自由に動き回ることができるが、電子が動き回れる空間を二次元の平面内に制限して垂直に磁場をかけ、極低温に冷やすと分数量子ホール液体として振る舞うことが知られている。
この特異な液体状態では、電流方向の電気抵抗がゼロになり、それに直行する方向の抵抗(ホール抵抗)が量子化するというという振る舞いが見られる。
この分数量子ホール状態にある電子は半導体中の電子と同様、核スピンと相互作用することは通常ほとんどないが、完全強磁性相と非磁性相の間で相転移を起こす状態にある電子は核スピンと強く相互作用することが知られている。しかし、そのメカニズムについては20年間謎だった。
研究グループは今回、強磁場、極低温という特異な環境で動作する走査型偏光選択蛍光分光顕微鏡と核磁気共鳴(NMR)とを組み合わせることにより、完全強磁性相と非磁性相という2つの異なる分数量子ホール液体が縞状の空間パターンを形成し、その境界で核スピンと強く相互作用することを見出した。