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アルツハイマー病に見られるアミロイド線維凝集体を解析―線維構造と病態との関連性にメス:理化学研究所ほか

(2024年8月30日発表)

 (国)理化学研究所と東京工業大学の国際共同研究グループは8月30日、家族性アルツハイマー病で観察される特異な綿花状の老人斑を再現するアミロイド線維を人工的に作成し、その凝集体に含まれる新規の構造パターンを解明したと発表した。線維構造の違いがアルツハイマー病の病態や進行を大きく変える可能性を示唆した先駆的な成果という。

 アルツハイマー病は、前駆体たんぱく質が切断されてできるペプチドの一種β-アミロイドの線維状の凝集体が、老人斑に蓄積することによって引き起こされると考えられている。

 ただ、β-アミロイド線維に存在する構造的な差異と、病態の差異との間の関連性については明らかになっていない。

 研究グループは今回、遺伝子変異を伴って若年発症する家族性アルツハイマー病を研究の対象とし、そこで観察される綿花状の老人斑の特徴を再現するアミロイド線維を化学合成して、その合成体に含まれる構造モチーフ(多くのたんぱく質に共通する構造パターン)を解析した。

 解析には、900MHz(メガヘルツ)高磁場固体NMRという最先端のNMR(核磁気共鳴装置)とクライオ電子顕微鏡を併せ用いた。

 その結果、βシートがW字型に折りたたまれた新規構造モチーフを発見し、脳由来の物質ではなくアミロイド線維の構造により綿花状の凝集体の特異性が説明できることを見出した。これは、線維構造の違いがアルツハイマー病の病態やその進行を大きく変える可能性を示した先駆的な研究としている。

 若年性アルツハイマー病に対する創薬や、アルツハイマー病のサブタイプによって異なる病態が生じる仕組みの解明などへの貢献が期待されるとしている。