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土壌の揮発性有機化合物の組成、土壌状態の評価に有効―ダイズ圃場での調査・研究で初めて明らかに:筑波大学ほか

(2024年9月18日発表)

 筑波大学、福島大学などの国立5大学と(国)理化学研究所の共同研究グループは9月18日、土壌の揮発性有機化合物の組成「土壌VOCプロファイル」が、土壌の状態の有効な評価指標になり得ることを明らかにしたと発表した。作物作りのための土壌の健全性維持への貢献が期待されるという。

 揮発性有機化合物(VOC)は、アルコール類やカルボニル化合物、アルカンなど、常温常圧で蒸発しやすい低分子の有機化合物。土壌には多様な有機化合物が存在するが、VOCは人間、昆虫、植物、微生物など様々な生物によって生成され、土壌の状態を敏感に反映するとされる。しかし、作物が生育している圃場における土壌VOCの包括的な分析はこれまで十分に行われていなかった。

 研究グループは今回、ダイズの収量増加のための土壌作りを目指し、福島県農業総合センターのダイズ圃場において、3年間にわたり異なる土壌条件で土壌サンプルを採取し、VOCを分析した。さらに、各種の土壌物理特性データや土壌中の化合物および微生物のデータを取得した。

 これらの土壌VOCのプロファイルを解析した結果、開花期にダイズが生育するときに土壌VOC量が増加すること、土壌VOCプロファイルは、土壌関連の網羅的なデータセットと強い相関を示すことなどが、実際に作物の生育する圃場において世界で初めて明らかになった。

 これは、土壌VOCプロファイルが土壌の状態を評価するための新たな指標となり得ることを示すもので、今後土壌VOCプロファイルと作物の収量や品質との関係が明らかになれば、土壌VOCプロファイルを農業現場における土壌管理ツールとして活用する可能性が開けるという。また、土壌VOCの生成メカニズムや土壌微生物との相互作用をさらに解明することで土壌の健全性維持に向けた新たなアプローチに繋がることが期待されるとしている。