ダークマターの謎の解明に新たな手法を案出―通過した重力波の信号変化を捉えダークマターの性質探る:高エネルギー加速器研究機構ほか
(2024年9月20日発表)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)の量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP)研究グループは9月20日、遠い宇宙で起きた天体合体からの重力波の信号を詳しく調べることで、重力波が通過してきたダークマターの性質を探れることが示されたと発表した。ダークマターの謎に迫る新たな研究の進展が期待されるという。
ダークマターは、宇宙を構成している物質の主要な成分で、宇宙の物質量の約85%を占めるとされる。だが、目に見えない、捉えどころのない物質であり、その正体は謎に包まれている。
近年の重力波観測の研究などから、ダークマターの候補として、マクロな天体であるブラックホールやミクロな新粒子の可能性が議論されている。つまり、宇宙に広がるダークマターは単一の存在としてではなく、原始ブラックホール(PBH)と新粒子など、マクロとミクロの構成要素の混合物として存在すると考えられている。
原始ブラックホール(PBH)は、ビッグバンの数秒後に多数形成されたと見られていて、従来の新粒子とは全く異なるダークマターの候補。しかし、原始ブラックホールを検出・同定し、普通のブラックホールと区別する方法は探し出されていない。
また、原始ブラックホールだけでダークマターを説明するのは重量の点からも困難であり、複数の構成要素からなる可能性が高い。しかし、このシナリオをテストする手法もこれまでない。
研究グループが考え出した手法は、天体合体時に発生する重力波がブラックホールを通過する際に、重力レンズによって振幅が周波数に依存してユニークに変化することを利用するもので、これが、ブラックホールを取り囲む拡がったダークマターのハロー存在と分布に非常に敏感であることを示した。
新手法はまた、原始ブラックホールを検出する方法を提供するとともに、周囲にダークマターハローがある原始ブラックホールと、そうでないブラックホールを明確に区別することを可能にする。
今回の研究成果は、原始ブラックホールが新粒子とともにダークマターとして存在する理論を直接検証することができるとしている。