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アサガオの花の寿命―2倍に延ばす新化合物発見:農業・食品産業技術総合研究機構

(2024年9月24日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月24日、愛媛大学と共同でこれまで難しいとされていたアサガオの花を長持ちさせる化合物を見つけたと発表した。花弁の老化を調節する遺伝子の働きが、この化合物によって抑えられるという。新化合物の溶液にアサガオの花を浸したところ、しおれるまでの時間が通常の約2倍に延ばせることが確認できた。今回の成果を他の花にも応用し、切り花の消費拡大につなげたいとしている。

 切り花は、植物ホルモンの一種であるエチレンに触れると老化が進み、しおれやすくなる。このためエチレンの働きを阻害する薬剤で植物を処理、花もちをよくすることは一般的に行われている。ただ、アサガオはユリやチューリップと同様、エチレンの影響を受けにくく、この方法で花を長持ちさせるのは難しかった。

 そこで研究グループは、アサガオの花弁の老化を進める仕組みを遺伝子レベルで解明、これまでにその遺伝子を特定していた。そこで今回はさらに、この遺伝子から作られるたんぱく質の活性を阻害して花の寿命を延ばす化合物探しを進めた。約22万種類の化合物の中から探索した結果、2種類の化合物を新たに突き止め、それぞれ「エバーラスチン1」、「エバーラスチン2」と名付けた。

 これらのたんぱく質を溶かした水に、切り取ったアサガオの花を浮かべたところ、花弁がしおれるまでの時間「花の寿命」が24時間程度となった。溶かしていない水に浮かべた場合の12時間に比べ、約2倍に延ばせることが分かった。研究グループは「化合物処理により細胞死に関連する遺伝子の働きが阻害され、花弁の老化が遅くなった」とみている。

 研究グループは今後、アサガオで確立した手法を用いて主要な切り花の日持ちを延ばす新たな化合物の探索を進めたいとしている。

(左)対照区   (右)Everlastin1処理
Everlastin1を処理した開花後24時間目のアサガオの花
対照区(化合物処理なし)では開花後約12 時間から花弁のしおれが始まったが、Everlastin1の化合物溶液に浮かべた花では開花後24時間でも開花した状態を保っていた。©農研機構