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レタスを宿主に遺伝子組み換えたんぱく質の発現量を向上―有用なたんぱく質の大量生産に展望:筑波大学

(2024年9月25日発表)

 筑波大学生命環境系の研究グループは9月25日、有用な遺伝子組み換えたんぱく質を生産する手段の一つである、植物を宿主に用いる手法で、レタスを宿主に用いて遺伝子組み換えたんぱく質の発現量を従来の2倍以上に高めることに成功したと発表した。遺伝子組み換えたんぱく質の大量生産につながることが期待されるという。

 医薬品などには有用な遺伝子組み換えたんぱく質がしばしば用いられているが、その生産手段の一つとして、植物を宿主として特定の遺伝子を組み込んだ細菌を感染させ、その遺伝子を持つたんぱく質を植物内に蓄積させるという方法が活用されている。

 研究グループはこれまでこの方法でたんぱく質を量産できる独自システム「つくばシステム」を開発し、大腸菌などを用いた異種たんぱく質発現系のシステムに匹敵する収量を得てきた。今回は宿主としてレタスを用い、遺伝子組み換えたんぱく質の発現量向上を試みた。

 研究グループは、これまでの研究から、RNA依存性RNAポリメラーゼ、略称RDRの発現を抑制すると、導入遺伝子の発現上昇に繋がると考えた。RDRは、RNA干渉と呼ばれる遺伝子発現抑制に関わる働きをする酵素で、このRDR遺伝子の発現を抑えれば遺伝子組み換えたんぱく質の発現量が上昇するのではないかというわけだ。

 実験の結果、RDR遺伝子の発現を抑制することで、従来の2倍以上の遺伝子組み換えたんぱく質の発現量の上昇を確認した。

 通常、たんぱく質を生産する際の宿主にはベンサミアナタバコが使用されるが、レタスは植物工場での主要な生産植物であり、これを宿主に用いることで、遺伝子組み換えたんぱく質の大量生産に繋がることが期待されるとしている。