シナプスの結びつきの強さで睡眠が変わる―マウス使った実験で見つける:筑波大学ほか
(2024年9月26日発表)
筑波大学、東京大学などの共同研究グループは9月26日、脳の神経細胞(ニューロン)同士の結びつき(シナプス)を強くする分子ツールを開発し、それを使って前頭葉のシナプスの結びつきを増強すると眠りが始まり、眠るとその結びつきが弱まる現象が起こることをマウスを使った実験で見つけたと発表した。
研究には、(国)理化学研究所、(国)日本医療研究開発機構が参加した。
シナプスは、神経細胞同士のつなぎ目のこと。人間の脳には1,000億個近い神経細胞があるといわれる。その脳では神経細胞同士がシナプスでつながっていて電子回路のようなネットワークを作り情報伝達を行っていることが知られ、シナプスのつながりは経験や学習によって変化する。
また、今回の研究グループなどの先行研究により、睡眠不足のマウスや睡眠が深くなる遺伝子を持つマウスでは、神経細胞のつなぎ目であるシナプスのたんぱく質の状態が変化していることが分かっている。
しかし、睡眠の結果としてシナプス強度が変化するのか、それともシナプス強度の変化が睡眠を制御しているのかは分かっていなかった。
今回の研究は、シナプス増強の影響を調べるために新たに開発した「SYNCit-K」と呼ぶ分子をマウスに導入する方法で前頭葉の興奮性神経細胞のシナプスを増強させて効果を調べた。
すると、前頭葉の興奮性神経細胞でシナプスの結びつきが強くなると眠りが始まり、睡眠の量が増え、睡眠の深さを示す脳波であるデルタパワーと呼ばれるゆっくりした波(デルタ波)の強度が増すことが見つかった。
そしてさらに、増強されたシナプスの強度はその後に生じる睡眠によって元の状態にまで戻ることが分かった。
研究グループはこの結果から、シナプスの強度を標的にして睡眠の質を制御することが「睡眠障害や不眠症などの治療薬開発の新たなアプローチになる可能性がある」と見ている。