熱水噴出孔で発電が起きている仕組みを解明―生命の起源の理解に貢献:理化学研究所ほか
(2024年10月3日発表)
(国)理化学研究所と東京科学大学、高知大学の国際共同研究グループは10月3日、海底の熱水噴出孔の中にイオンを選択的に運ぶ小さな通路が存在し、熱水噴出孔がイオン濃度差発電をしていることを突き止めたと発表した。
イオンの濃度差を利用した発電は、生命がエネルギーを生成する際に利用している仕組みであり、今回の発見は生命の起源に迫る有力な手がかりになるという。
人を含め全ての生命は、細胞内でイオンの濃度差を利用してエネルギーを生み出している。そのため、生命がどのようにしてこの仕組みを利用し始めたのかという疑問は、生命の起源に迫る重要な問いである。
熱水噴出孔には地表とは異なる独自の生命圏が形成されており、太古からある熱水噴出孔は、地球上で最初の生命が誕生するための「天然の化学合成装置」としての役割を果たしていた可能性が考えられている。
この関心から、研究グループのリーダーらはこれまでに、黒煙を噴出するブラックスモーカー型熱水噴出孔が燃料電池のように発電し、その電気を使って二酸化炭素から有機分子が生成されることを明らかにした。
今回は、熱水噴出孔のもう一つのタイプであるホワイトスモーカー型を研究対象としてマリアナ海溝から試料を採取、大型放射光施設「SPring-8」の放射光を用いてナノレベルの詳細な構造解析を行った。
その結果、熱水噴出孔が板状の形を持つ鉱物で構成され、その鉱物が規則正しく並ぶことで、イオンを運ぶために最適な通路を形成していることを見出した。さらに、この熱水噴出孔のサンプルは、海水中のイオンを選択的に運ぶことで電気を生み出していることを確認した。
この発見は、生命のエネルギー変換システムの一部が、地球の自然の化学反応によって生成されることを示す成果としている。