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健診で「脂質異常」―医療機関受診者は2割未満:筑波大学

(2024年10月8日発表)

 筑波大学は10月8日、健康診断で心筋梗塞や認知症などを発症する危険が高い脂質異常症と指摘されても半年以内に医療機関を受診する人は2割に満たないとする調査結果を発表した。国民健康保険加入者20万人以上のデータを分析して突き止めた。どうすれば未受診者を減らせるか、今後はこの調査結果をもとに検討していく。

 調べたのは筑波大の田宮 菜奈子 教授らの研究チーム。茨城県の国民健康保険加入者のうち特定検診を受けた40~74歳の20万2,369人のデータを分析。中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールが基準値より高いなど脂質異常とされた3万3,503人を割り出した。そのうえで、特定検診後180日以内に脂質異常症について医療機関を受診したかどうかを詳しく調べた。

 その結果、脂質異常症について医療機関を受診した人は、特定検診で脂質異常とされた人のわずか18.1%、6,052人にとどまった。特定検診で悪玉コレステロール値が高く、異常の程度が大きいとされた人ほど受診した割合は高かったが、それでも悪玉コレステロール値が最も高かったグループで約8割の人が受診していなかった。

 そこで統計学的な手法を用いて、なぜ脂質異常症と指摘されても医療機関を受信しない人がいるのかを詳しく分析した。年齢や性別、飲酒頻度、喫煙の有無、検診場所(公共施設または医療機関)、自覚症状の有無、脂質異常の種類と程度、居住地の医療機関数、薬の処方の有無などとの関係を解析した。

 この解析では、若年者や男性、飲酒習慣がときどきある、公共施設で検診を受けた、自覚症状がない、検診で他の異常を指摘されなかった、降圧剤や抗うつ薬などの薬の処方を受けていない、といった人たちほど、特定検診で脂質異常とされながら医療機関での受診をしていないことが分かった。

 これらの結果から「検診を公共施設で受けた人は医療機関との接点があまりない可能性がある」として、今後、検診結果を送る際には「居住地の近くで受診できる医療機関のリストも案内するなどの工夫が必要」と研究チームはみている。