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琵琶湖から球形緑藻ボルボックスの新種を発見―古代湖からのボルボックス固有種発見は世界で初めて:国立環境研究所

(2024年10月9日発表)

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今回発見・新種記載された球形緑藻「ボルボックス・ビワコエンシス」の無性球状体 ©国立環境研究所

 (国)国立環境研究所は10月9日、琵琶湖の水質調査で採集された湖水から新種のボルボックスを発見したと発表した。琵琶湖のような古代湖から固有のボルボックスの新種が発見されるのは世界で初めてという。

 ボルボックスは細胞数が数百から数千個から成る球状の浮遊性の緑藻。春から夏にかけて水田や湖沼によく見られる。

 琵琶湖は100万年以上前から存在する、いわゆる古代湖で、世界各地の古代湖からは多くの生物の固有種が報告されており、琵琶湖ではビワコオオナマズやホンモロコなど各種固有種が見つかっている。ただ、球形緑藻ボルボックスの古代湖固有種はこれまで世界的にも発見例がない。

 環境研琵琶湖分室の研究チームは、2022年10月に琵琶湖南湖柳崎で採取した湖水のサンプルからボルボックスの培養株を確立した。ボルボックスの球状体の内部には次世代の娘球状体があり、通常は無性生殖で増殖するが、環境が悪くなると有性生殖を行い、受精卵に相当する接合子を作る。

 研究チームは今回、培養株を用いて有性生殖を誘導し、接合子を得た。その形態情報を明らかにするとともに、分子情報と照らし合わせた結果、世界で初めて発見された古代湖琵琶湖固有のボルボックス種であることが明らかになった。

 この新種は、既知の種とはその特徴が明確に異なっている。卵と精子を同時に持つ雌雄同体の有性生殖の群体が誘導され、受精後に、これまで記載されていたボルボックス種とは異なる形の接合子が形成された。また、分子情報を用いた系統解析でその新奇性が浮き彫りになった。

 これらの成果から、近縁の種とは異なる独自の進化を経て出現した琵琶湖固有の未記載種であると結論付けられ、研究チームはこの新種を「ボルボックス・ビワコエンシス」と命名した。

ボルボックスの無性球状体の模式図 内部に次世代の娘球状体を持ち、通常は無性生殖で増殖する。環境が悪くなると、有性生殖を行い、乾燥に耐える接合子(受精卵)を作る。 ©国立環境研究所