秋季に太平洋の中・高緯度帯から大気へ酸素が放出―大気観測結果の解析により推定:国立環境研究所ほか
(2024年11月7日発表)
(国)国立環境研究所と気象庁気象研究所の共同研究グループは11月7日、大気中の酸素濃度の観測結果を解析したところ、秋季に太平洋の中・高緯度帯から大気への酸素放出が存在する証拠が得られたと発表した。大気-海洋間の酸素の交換に関する理解が深まったとしている。
大気中の酸素(O2)濃度には化石燃料の燃焼や、植物の光合成・呼吸をはじめ、大気と海との酸素交換などが深く関わり、その濃度は季節的に、長期的に変化している。
春-夏季には植物プランクトンによる光合成に伴い海洋表層にO2が生成され、大気に放出される。秋-冬季には海洋表層が冷却され、鉛直混合が引き起こされることに伴い、表層下から酸素の少ない海水が表層に現れ、O2が海水に吸収される。
海面水温の季節変化による溶解度の変化も、O2放出・吸収の季節変化を強めている。大気中のO2濃度の季節変化は陸域生物圏からのO2放出・吸収の変化と海洋からのO2放出・吸収の変化を反映し、夏季に極大、冬季に極小となる季節変化を示す。
こうした大気-海洋間のO2交換に関する知見に加えて、秋季に海洋からO2が放出される可能性が別途指摘され、メカニズムが検討されてきたが、実際にどの海域でどの程度の規模で生じているかは未解明だった。
そこで共同研究グループは、アジア・太平洋地域において実施してきた大気中のO2濃度の広域観測データを用いて、太平洋における大気中の濃度の季節変動の空間分布を明らかにし、さらに大気-海洋間のO2交換量と大気輸送モデルを用いたシミュレーション結果との詳細な比較から、秋季における海洋からのO2放出の検出を試みた。
その結果、秋季のO2放出が太平洋の中・高緯度帯に存在する証拠を示すことに成功した。ただ、その強度や分布の詳細を定量的に推定することはできなかったという。その解明が今後の課題としている。