哺乳類と鳥類の背骨のパターンを網羅的に解析―動物の進化メカニズムの解明に一歩:理化学研究所ほか
(2024年11月18日発表)
(国)理化学研究所と東京大学の共同研究チームは11月18日、哺乳類と鳥類の脊椎(せきつい)を構成する椎骨(ついこつ)の数(背骨の数)のパターンを網羅的に解析、これまで知られていなかった進化的制約を発見したと発表した。動物の形態進化のメカニズム解明に役立つことが期待される。
研究を行ったのは、理研生命機能科学研究センターのローリー・サーバス研究員らのチーム。
動物の体の形は、進化の過程で環境や生活などに合わせて変化してきた。中でも脊椎動物の特徴の一つである椎骨は、体を支え、運動を可能にする重要な器官で、その数は動物の種によって異なる。だが、椎骨の数がどのように進化してきたのか、進化にはどのようなルールがあったのかは分かっていない。
哺乳類の頸椎(けいつい(首の骨))の数は、ほとんどの哺乳類が同じ7個だが、それが何故か鳥類では種によって大きく異なり10個以下の種もあれば20個以上もの種もある。
一方で、遺伝子操作技術の発展により特定の遺伝子の働きを変化させることによりマウスを使った実験などで椎骨の数を人為的に変えられることが分かってきている。
研究チームは、様々な四肢動物(四つ足動物)の椎骨を網羅的に解析することで、椎骨の進化での遺伝子の役割や、進化の制約を明らかにすることを目指しており、その一環として今回の研究に取り組んだ。
研究は、世界中の博物館の記録や、国内の鳥の博物館などの標本コレクションを参照にして両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の4つのグループから計388種の動物の椎骨のデータを収集し、そのパターンを解析した。
その結果、①哺乳類は、隣り合う領域の椎骨の合計数がほぼ一定に保たれる「総数一定型制約」、②鳥類は、体の前後の椎骨の数がほぼ等しくなる「バランス型制約」の下にある、ことを発見した。
この研究結果は、動物の進化のメカニズム解明に役立つものと見られ、中でも鳥類が「バランス型制約」の下にあることはこれまで知られていなかった新たな発見で、生物種の分類や進化系統の推定への利用が期待される。
たとえば、鳥のような化石が発見されたとして、それが鳥類に近いのかそれとも非鳥類型の恐竜と見るべきなのかを判断する必要が生じた際など、椎骨の数が「バランス型制約」に従っているかどうかはそれを判断するための一つの指標になる、と理研はいっている。