運動部活動の熱中症対策は、当日と前日の暑さ指数の考慮が大切―大会直前は屋内練習に切り替え、身体冷却や涼しい日の練習などの対策を:国立環境研究所
(2024年11月19日発表)
(国)国立環境研究所 気候変動適応センターの大山 剛弘(おおやま たかひろ)研究員らの研究チームは11月19日、中学、高校の運動部の活動中に多発している熱中症発生リスクを分析した結果を発表した。練習当日の暑さ指数(湿度、気温、輻射熱を考慮した指数)が高いほど熱中症が起きやすく、前日の暑さ指数の高さがおおいに関係していることも確認された。屋内練習への切り替えや身体を冷やすなどの処置を取り入れる対策が必要としている。
中学、高校の運動部活動では毎年数千件もの熱中症が発生している。熱中症は運動の種類や時期、地域、活動場所、学校の条件とともに、気温、暑さへの慣れなどでも発症リスクが違ってくる。
そこで研究チームは、活動中に熱中症が起きやすい比率が暑さ指数や活動状況に応じてどのように変わるかを定量的に調べた。
2010年から10年間の全国の中学、高校の部活動中に発生した熱中症事例をもとに、発生時、前日、前々日の平均気温と部活動の種別、地域、場所など12個の変数を調べ、熱中症の起こりやすさを探った。
ある条件で熱中症が起こりやすい場合に、暑さ指数をどの程度下げれば熱中症のリスクが低減できるかも分析した。
その結果、暑さ指数が熱中症発生の当日と前日の平均、前々日の平均がはっきりと熱中症発生と関係していることが見つかった。当日の暑さ指数が高いほど熱中症が発生しやすいことは全国的に当てはまるものの、前日の暑さ指数の高さが熱中症と関連が強いこともわかった。
逆に前々日の暑さ指数が高まるほど熱中症が発生しにくい傾向にあった。これは前々日に暑さ指数が高いと、その後に熱中症対策が積極的に講じられたためと思われる。
さらに部活動の種類や時期、地域、活動場所によって熱中症が起きるリスクが異なった。野球やソフトボール、サッカー、フットサル、テニス、陸上競技、弓道などは熱中症が起きやすいスポーツだった。
対策としては、①活動の是非を判断するための基準を引き下げる、②大会直前で練習を緩められないなどの場合には、活動前に「冷水やアイススラリー(細かい氷の粒子の液状飲料)」を飲む、活動中は「水掛け」や「アイスベスト」を着用する、活動後には「冷水」などを使う。さらにこれらを組み合わせた身体冷却対策が必要としている。