パン作り用の小麦にむけた新品種「せとのほほえみ」を育成―病気や低温障害などに強く、製パン性に期待:農業・食品産業技術総合研究機構
(2024年11月29日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センターは11月29日、パン作りに優れ、コムギ縞萎縮病(こういしゅくびょう)などにも強い小麦の新品種「せとのほほえみ」の育成に成功したと発表した。関東から九州までの広い地域で栽培が可能になるという。
西日本ではパン用の小麦品種としてこれまで「せときらら」や「ミナミノカオリ」が広く栽培されてきた。「せときらら」は多収である反面、実のたんぱく質含有率が低くなりやすく、パン用途に必要な品質の確保が難しかった。「ミナミノカオリ」は収穫期の雨による品質低下などが問題になっていた。
さらにコムギ縞萎縮病の発生地域の拡大と温暖化によって、暖冬年の春先の低温による幼穂の凍霜害(とうそうがい)の発生などのリスクが増加している。
同研究センターでは品種面で「せときらら」よりたんぱく質含有量が高くてパン作りに優れ、栽培面で病害に強い優れた秋播性の新品種の育成を目指していた。
パン用系統の品種「中系10-28」と、穂発芽耐性に優れた秋播性の品種「10Y1-048(くまきらり)」との交配で育成した。
子実のたんぱく質含有率は「せときらら」より約1%高い値を示した。パン用途には最低11.5%以上のたんぱく質含有量が必要となるが、これらの目標を達成しやすい品種と見ている。
品種の名称は、瀬戸内地域から生まれたことと生産者から消費者までを笑顔にすることを願って名付けられた。