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新型コロナウイルスの子孫の細胞内輸送明らかに―ウイルスの産生を阻害する新薬の開発に期待:京都大学/理化学研究所

(2024年11月29日発表)

 京都大学と理化学研究所の共同研究グループは11月29日、感染細胞内で形成された新型コロナウイルスの子孫ウイルスが細胞外へと放出されるメカニズムを解明したと発表した。

 子孫ウイルス粒子の輸送に重要な役割を担っているCOPI複合体と呼ばれるたんぱく質複合体の機能を阻害すると、子孫ウイルスが細胞から産生されなくなることが判明。新型コロナウイルスの創薬に繋がることが期待されるという。

 新型コロナウイルスは感染した細胞で増殖する際、小胞体とゴルジ体の中間に存在する小胞小管クラスター(ERGIC)という部位で子孫ウイルス粒子を形成する。ERGICは袋状の膜構造を持っており、ERGIC膜上で形成され、その内腔に出芽した子孫ウイルス粒子は、COPI複合体により輸送小胞へと積み込まれ、細胞外へと放出に向かう。

 細胞外へ放出されたウイルス粒子は次の標的細胞に感染して増えていく。従って、子孫ウイルス粒子の小胞輸送はウイルス増殖に必須のステップであるが、その分子機構はこれまでほとんど明らかにされていなかった。

 研究グループは今回、アレイトモグラフィー法、電子線トモグラフィー法、免疫電子顕微鏡法を用いて、新型コロナウイルス感染細胞の微細構造を3次元的に解析した。

 その結果、子孫ウイルス粒子を輸送する小胞にCOPI複合体が結合しており、ウイルス感染細胞においてCOPI複合体の機能を阻害すると、ERGICの内腔に子孫ウイルス粒子が滞留し、新型コロナウイルスの産生が著しく抑制されること、つまり、子孫ウイルス粒子が細胞から産生されなくなることを突き止めた。

 この発見は、COPI複合体を標的として新型コロナウイルスの産生を阻害する新たな治療薬の開発へと発展することが期待されるとしている。