収縮力の保たれた心不全の改善を確認―心臓再生医療の実現に向けて前進:慶應義塾大学/筑波大学
(2024年12月14日発表)
慶應義塾大学と筑波大学の共同研究グループは12月14日、有効な治療法がない収縮力の保たれた心不全が、「心筋ダイレクトリプログラミング法」という治療法により改善することをマウス実験で明らかにしたと発表した。
心筋ダイレクトリプログラミング法は、多能性幹細胞を用いずに心臓線維芽細胞から直接心筋細胞を誘導する技術。
研究グループはこの技術の開発を推進してくるとともに、心臓線維芽細胞から心筋を作り出すために必要な心筋リプログラミング遺伝子を見出し、これまでに、心筋梗塞モデルマウスと、収縮力が低下した心不全モデルマウスに遺伝子を導入して、心臓再生と、心臓線維化、心臓機能の改善に成功している。
心不全には収縮力が低下した心不全と、収縮力の保たれた心不全の2タイプがあるが、収縮力の保たれた心不全に対しても、この方法が適用できるかどうかはこれまで不明だった。
研究グループは今回、心臓線維芽細胞において心筋リプログラミング遺伝子の発現を薬剤投与によって自由に制御できる遺伝子改変マウスを開発し、このマウスを用いて、心筋ダイレクトリプログラミング法による治療を試みた。
その結果、収縮力の保たれた心不全の線維芽細胞から心筋細胞を再生させ、心臓線維化と心臓機能を改善させることができることを世界で初めて明らかにした。
今回のこの研究により、心筋ダイレクトリプログラミングが、心筋梗塞や収縮力が低下した心不全だけでなく、収縮力の保たれた心不全にも適用できる心臓再生治療として応用が可能であることが示され、新しい心臓再生医療の実現を大きく前進させるものと期待されるという。今後、臨床応用を目指した研究を推進するとしている。