硫化水素汚染水浄化に新技術―低コストでメタン回収も:国立環境研究所
(2025年1月7日発表)
(国)国立環境研究所は1月7日、微生物の反応を妨げるほど高濃度の硫化水素を含む有機廃水を浄化処理し、メタンガスを回収する新技術を開発したと発表した。廃水中の硫化水素を除去するのに不可欠とされていた装置を必要としない新型メタン発酵リアクターの開発に成功した。試作機では、超高濃度の硫化水素を含む廃水を処理して90%以上の有機物を除去するとともに、メタンガスを低コストで安定的に回収できることを確認した。
メタン発酵による廃水処理は、廃水中の有機物を分解して新エネルギーとして利用できるメタンガスを回収できるため、世界的に注目されている。ただ、メタン発酵は反応が不安定なため、廃水に空気を送り込んで事前に廃水中の硫化水素を除去するばっ気装置が必要とされ、高コストの原因となっていた。
環境研は今回、このばっ気装置を必要とせずに廃水中の有機物から発生するバイオガスを廃水中に導入する方法を考案した。二つの容器を縦につなぎ、その間はバイオガスだけが通過できるよう膜で分離、半連結構造とした。これによって下段にある容器で発生した気体「バイオガス」が上段の容器に移行し、メタン生成と硫化物除去がそれぞれ最適なpH(水素イオン濃度)管理をしながら実現できる仕組みだ。
実験では、高濃度の有機物を含む模擬廃水を利用して実験をしたところ、有機物の90%以上という高い除去率が達成できたという。模擬廃水の硫化物濃度を段階的に引き上げた結果、リアクターに流れ込んだ硫化物濃度は最大6,000㎎S/Lと高い場合でも、硫化水素を効率的に除去できることがわかった。
これらの結果から、研究チームは「超高濃度の硫化水素を含む廃水からもメタンガスとしてエネルギー回収が可能であることを示している」と話している。今後は国内外の企業との共同研究を進め、実用化を目指したいとしている。