[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

外来アリの防除に適した生分解性の新駆除剤を開発―微細な繊維状セルロースをゲル化剤に利用:東京都立大学/森林総合研究所ほか

(2025年1月29日発表)

画像

アシジロヒラフシアリの働きアリ。 (撮影:砂村栄力)

 東京都立大学、(国)森林総合研究所、八丈島八丈町、(株)アグリマート、イカリ消毒(株)の共同研究グループは1月29日、外来アリ類の防除に広く利用できる植物由来の生分解性アリ駆除剤を開発したと発表した。

 開発したのは、セルロースナノファイバーの一種である微細な繊維状セルロース(MFC)をゲル化剤として用いた新タイプのハイドロジェルベイト剤。

 ハイドロジェルベイト剤は海外で開発された毒餌剤で、高吸水性ポリマーに殺虫成分やショ糖水溶液を含有させてある。甘い液状の餌を好むアリを強く引き寄せ、地面に直接まけるという特長があり、アルゼンチンアリなどの防除に利用されている。八丈島で難防除性外来種アシジロヒラフシアリを対象に実施した防除試験でも顕著な防除効果が確認された。

 そこで研究グループはこの技術・手法を取り入れ、今回新タイプの生分解性ハイドロジェルベイト剤を開発した。これまでのハイドロジェルベイト剤がポリアクリル酸ナトリウム系(ACR)の高吸収性ポリマーを基材にしているのに対し、新ハイドロジェルベイト剤は植物由来のセルロースMFCをゲル化剤に用いて生分解性を追究した。

 八丈町でアシジロヒラフシアリを対象に防除試験を行ったところ、ACRハイドロジェルベイト剤と同等の防除効果が認められた。

 従来のACRハイドロジェルベイト剤は基材の高吸水性ポリマーが土壌中に長期間残留する可能性があるが、新開発したハイドロジェルベイト剤の基材であるMFCは二酸化炭素、水、および微量の無機塩に比較的速やかに完全分解されることから、環境負荷の比較的小さい防除手法といえるという。

 ただ、従来のハイドロジェルベイト剤に用いられている合成樹脂の量は少量であり、かつ毒性があるわけではなく、またインターネットで入手できる材料で簡便にACRハイドロジェルベイト剤を作製できるという特長も備えていることから、ACRハイドロジェルベイト剤とMFCハイドロジェルベイト剤を状況に応じて使い分けることが望ましいとしている。