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トポロジカル絶縁体で特殊な電気磁気効果を直接観測へ―磁性層・非磁性層を積層化し観測可能に:理化学研究所/東京大学/東北大学/産業技術総合研究所

(2017年2月14日発表)

 (国)理化学研究所と東京大学、東北大学、産業技術総合研究所の共同研究グループは2月14日、トポロジカル絶縁体と呼ばれる物質で、磁性を持った層と磁性の無い非磁性層とをサンドイッチ状に積み重ねた薄膜を作製し、磁性層の磁化の向きをコントロールすることにより、特殊な「電気磁気効果」の発現が期待される状態を実現したと発表した。

  トポロジカル絶縁体は、内部は電気を通さない絶縁体だが、表面は電気を通す特殊な物質。新たな半導体工学の基盤となるスピントロニクスや新情報通信工学の基礎となる量子コンピューティングへの応用が期待され、近年最先端の研究対象になっている。

  研究グループは今回、ビスマス、アンチモン、テルルから成るトポロジカル絶縁体と、これに磁性元素であるクロムを添加した磁性トポロジカル絶縁体を用い、磁性・非磁性・磁性三層の積層薄膜を作製、その際、上下二つの磁性層の保磁力に差をつけ、外部磁場の掛け方をコントロールすることによって二つの磁性層の磁化方向を制御できるようにした。

  この薄膜に、まず垂直方向に強い外部磁場を印加して上下二つの磁性層の磁化方向をそろえたところ、作製した薄膜試料の端、つまりサンドイッチのへりにだけ電流が流れるという特異な「量子異常ホール効果」が観測された。

 次に、外部磁場の印加方向を反転させてだんだん強くし、保磁力の小さい方の磁化を反転させた。その結果、二つの磁性層の磁化が反平行(逆向き)になると同時に、薄膜試料に電流が流れなくなり、表面が完全に絶縁化した。

 この完全な絶縁体では、特殊な電気磁気効果の観測が期待されるという。

 電気磁気効果は電場印加によって磁化が発生したり、磁場印加によって電気分極が起きたりする現象で、今回の場合は電気分極が生じると予測されている。

 研究グループは今後、この特殊な電気磁気効果を直接観測し、トポロジカル絶縁体の理解が深まることを期待している。