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“燃える氷”メタンハイドレートを非破壊観察―海水と共存する様子とらえる:産業技術総合研究所ほか

(2025年2月3日発表)

 (国)産業技術総合研究所は2月3日、(国)北見工業大学などとの共同研究で“燃える氷”と呼ばれ次世代エネルギー資源の一つとして期待されているメタンハイドレートを可視化し海水と共存する様子を非破壊観察でとらえる方法を開発したと発表した。

 研究には、北見工大学のほか高エネルギー加速器研究機構、佐賀県立 九州シンクロトロン光研究センターが参加した。

 メタンハイドレートは、低温・高圧の海底でのみ安定な白い氷状の結晶。水分子の中に燃えるメタンの分子が閉じ込められた構造をしていて、地表ではなく海底の堆積物中に存在する。我が国周辺海域の低温・高圧の海底域でも存在が確認され、日本海の沿岸域やオホーツク海などの海底の泥層中で塊状の表層型メタンハイドレートが見つかっている。

 こうしたことから、国産新エネルギー資源の候補として浮上してきており、たとえば経済産業省は「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の中にメタンハイドレートの商業化に向けたプロジェクトを民間企業主導で実施する計画をもりこんでいる。

 産総研はこの流れに対応しようと、メタンハイドレートからのメタン回収・生産技術の開発や、海域調査、環境影響評価に取り組んでおり、今回の研究もその一環として行った。

 これまでの観察・分析手法ではメタンハイドレートと周囲に存在する海水・氷との区別ができず、物性を調べる観察は容易でなかった。今回の方法は、その区別や観察を容易にするもので、物体を透過するX線の変化で物体内部の三次元構造を非破壊で観察するX線CT技術(X線コンピューター断層撮影技術)を使って開発した。

 実験は、北海道の十勝沖で採取したメタンハイドレートを使い海底から採取した後すぐ液体窒素中で急冷保存し、-150℃程度まで数マイクロメートル(1㎛は1,000分の1mm)の分解能で可視化できる低温型X線CT技術を使って観測を行った。

 その結果、メタンハイドレートが分解していく過程を高分解能で可視化し非破壊でその場観察することに成功した。

 “燃える氷”の白い部分の65%がメタンハイドレート、35%が凍結した海水だったという。

 産総研は「氷(および海水)と共存するメタンハイドレートを可視化できる世界で唯一の非破壊分析手法」と言っている。