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急性肝障害の病態進行を予測するAIを開発―内科治療の効きやすさを判断し適切な医療迅速に:九州大学/名古屋大学/理化学研究所ほか

(2025年2月10日発表)

 九州大学と名古屋大学、理化学研究所らの共同研究グループは2月10日、急性肝障害患者を3つの集団に分類するAI(人工知能)モデルを開発、初診時に得られる情報をもとに、どのような患者が急性肝不全に進展するかなどを予測することが可能になったと発表した。

 経験の少ない医療機関でも治療の効きやすさを予測できるようになることから、患者を適切な医療施設に移して最適な治療を迅速に行うことが可能になり、急性肝不全患者の救命率を大幅に向上させることが期待されるとしている。

 急性肝障害は、黄疸や吐き気、嘔吐、全身倦怠、発熱などに襲われたりする急性の肝疾患で、患者の約99%は治療を要することなく回復するが、約1%の患者は肝機能が低下し急性肝不全へと進展する。急性肝不全は意識障害を伴わない初期段階であれば多くは内科治療に反応して回復する。しかし、意識障害を伴う昏睡型に進展してしまうと、約30%しか内科治療に反応せず、残りの約70%の患者は救命のために肝移植が必要になる。

 現状では急性肝障害において内科治療への反応性を予測する手段はなく、一般病院から高次医療機関や肝移植施設への搬送基準が明確でないため、搬送の遅れが急性肝不全の予後不良の一因となっている。加えて、我が国での臓器移植例は患者数に比べて少なく、救命できないケースが少なくない。

 研究グループはAI技術を用いることにより、こうした現状の改善方策に取り組んだ。

 九大病院に急性肝障害・急性肝不全で入院した319例の患者を対象に、入院1週間の臨床情報と採血データをAI技術で解析し、急性肝障害の進行状態を反映する指標を特定した。

 この指標を詳細に分析した結果、患者の病態進行パターンを6つのグループに分類できることが判明、さらにこの6グループは、自然に回復するグループ、内科治療に反応するグループ、内科治療に反応しないグループの合計3つの集団に分けられることを発見した。

 これを踏まえ、初診時の血液検査などの臨床情報を用いることにより、患者がどの集団に属するかを予測するAIモデルの開発に世界で初めて成功した。

 これにより、どのような人が高次医療機関や移植施設への搬送が必要な重症患者になり、どのような人が重症化せずに回復できるのかを早期に判断することが可能になったとしている。