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古細菌に寄生する細菌培養―廃水処理技術に応用も:産業技術総合研究所ほか

(2025年2月11日発表)

 (国)産業技術総合研究所と(国)海洋研究開発機構などの研究グループは2月11日、廃水処理で中心的な役割を担う古細菌「メタン生成アーキア」に寄生してその活性を低下させる細菌の培養に成功したと発表した。進化の過程で約40億年前に誕生し、遺伝情報も大きく異なるアーキアに寄生する細菌の培養に成功したのは初めて。今後はこの細菌を詳しく調べ、さまざまな廃水処理システムの診断・制御技術の開発などに取り組む。

 北海道大学と東北大学も参加した研究グループは、培養に成功した細菌に「ミニシンコッカス アーカエイフィルス」と命名した。進化の過程で約40億年前に他の微生物と別れたこの細菌は、遺伝情報などが大きく異なる他の微生物に寄生する。ただ、寄生する宿主の範囲は非常に狭く、宿主となる微生物「アーキア」の特有の部位にのみ感染することなどが分かった。

 さらに、新たに培養したこの細菌が属する未知の細菌系統群を分類学上の新門「ミニシンコッコータ」と命名した。系統学的に整理して分離株を公的な菌株保存期間に寄託することで、これまで謎に包まれていた未知の細菌系統群に属する細菌の生理や生態学的な役割の理解が進むと期待している。

 研究グループは今後、自然環境や人工生態系内に広く存在するミニシンコッコータ門の細菌が物質循環に与える影響を評価し、さまざまな廃水処理システムの新しい診断・制御技術の開発などに取り組む。