虹色の輝きを放つ火山噴出物の光彩は構造色―噴火でできた噴出物表面の微細構造が発色:産業技術総合研究所
(2025年2月19日発表)
(国)産業技術総合研究所と木彫り作家 川崎 誠二氏の研究グループは2月19日、虹色の光彩を示す火山噴出物「スコリア」の光彩は、噴出物表面の微細組織から生じる構造色であることを突き止めたと発表した。
スコリアは、火山の爆発的な噴火の際に生成される空隙(くうげき)の多い噴出物のうち、黒っぽい色のもので、玄武岩質から安山岩質のマグマの噴火で多く見られる。化学組成を反映して黒色や灰色、また長時間高温で酸化した場合は赤褐色を呈するが、中に青色や虹色に輝く光彩を示すものがある。
スコリアのこの光彩についてはこれまで詳細な科学分析や成因解明は試みられていなかった。
研究グループは、1986年の伊豆大島の火山噴出物から得られた虹色スコリアを対象に、表面と断面の詳細な調査を行った。調べた試料は三原山のB火口から噴出したもので、このときのB火口の噴火は規模が特に大きく、噴煙は最高1万6,000mに達した。
肉眼や電子顕微鏡などによる観察の結果、スコリアの虹色光彩は粒子の外側から内側にかけて、青色で透明から、黄~赤色で不透明な領域に遷移していた。この光彩は、観察角度によらず同じ領域で同じ色を呈した。それぞれの領域の表面には、金平糖のような細粒の結晶である球晶が群れのように密に分布していた。
スコリア表面の複雑な組織が虹色光彩を発現するメカニズムを考察したところ、観察した青色・透明領域と黄~赤色・不透明領域に鉱物やガラスなど構成物質の違いがなかったことから、虹色光彩は通常の物質色ではなく、構造色であることがわかった。
構造色は、色料による光の吸収などで生じる発色ではなく、物質の微細構造によって光が干渉するために色づいて見える発色。微細構造に基づくモルフォチョウの真っ青な翅の発色はその典型例。
今回の研究では、虹色スコリアの構造色を発現する微細組織の形成メカニズムも明らかになり、虹色スコリアは噴火という極限環境での特殊な過程で初めて形成されることがわかった。研究成果は無機物質の新しい発色技術の開発に繋がる可能性があるとしている。
