スギ林のCO2吸収量―25年後に2010年比27%減少:森林総合研究所
(2025年2月27日発表)
スギによる日本の温暖化ガス(CO2)の吸収量は25年後に2010年比で最大27%減少するという予測になった。(国)森林総合研究所は2月27日、戦後復興の一環で大量に植林されたスギによるCO2吸収量の試算結果を発表した。伐採量や再造林の進め方で4つのケースを試算、いずれも吸収量は減少する結果となった。ただ、地域に適した森林管理で減少幅は小さくできるとし、地域ごとに最適化した森林管理戦略が必要としている。
日本では第二次世界大戦後に経済復興を目指し積極的に植林、スギの多くが収穫期を迎え伐採が進んでいる。しかし、人手不足などから伐採後の再造林が難しく、温暖化対策の一環として期待されるスギによるCO2吸収・固定化の減少が危惧されている。
そこで森林総研は、今後の伐採量と再造林の進め方によって4つのケースを想定、国内のスギ人工林による年間CO2吸収量を試算。2050年と2090年におけるCO2吸収量を2010年の実績と比較した。
その結果、収穫期に達してCO2吸収量が減ったスギは伐採、再造林も積極的に進めるというCO2吸収量の減り方が最も少ないケースでも年間CO2吸収量は15%減少。一方、伐採は進めながら再造林はせず自然に広葉樹に置き換わるのに任せた場合は、スギによるCO2吸収量は2010年比で27%減少することが分かった。
さらに、今回の研究ではスギのタイプが異なる西日本と東日本では、伐採・再造林の進め方の違いによってCO2吸収量の減少幅を小さくできることも見えてきた。こうした年間炭素吸収量を増加させる森林管理は、土砂災害防止と広葉樹の生息地提供という恩恵ももたらしている。
今回の研究結果から、森林総研はスギが与えてくれる恩恵に対する潜在的リスクも検討しながら「地域に最適化された森林管理戦略が必要」と指摘している。さらに「スギ以外の針葉樹人工林樹種、たとえばヒノキでも、今後は面積減少と高齢化が進むと予想される」とし、スギ以外の樹種についても研究を進める計画だ。