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温暖化時の産地を地図化―ミカンからアボカドへ:農業・食品産業技術総合研究機構

(2025年3月7日発表)

 地球温暖化でミカン産地はアボカド栽培の適地に。(国)農研機構は3月7日、温暖化で変わる栽培適地の予測地図を作ったと発表した。日本のミカン産地は温暖化の影響で徐々に北上、代わりに南西諸島や伊豆・小笠原諸島などで育つアボカドの栽培適地が大きく広がるという。気温変化に弱く数十年にわたって同じ樹で収穫するミカンは、将来の温暖化に合わせた長期的な生産計画の検討が必要とされる。

 ミカンは日本で最も広い栽培面積を持つ果樹だが、栽培に適した気温は年平均で15~18℃。現在は関東南部以西の太平洋沿岸部や九州の沿岸部で栽培されている。ただ、気温が1℃上昇しても日焼けや皮と実の間に隙間ができて腐敗しやすくなるなどの障害が発生、生産に悪影響が出る。一方、アボカドは比較的気温の高い亜熱帯で育ち、日本では南西諸島や伊豆・小笠原諸島を中心に栽培されている。

 そこで農研機構は、今後の温暖化に伴ってこれらの果樹の栽培適地が今世紀末までにどう変化するかについて予測を試みた。栽培適地の変化を地図化し、将来のミカンとアボカドの栽培適地が1km単位で分かるようにした。

 その結果、ミカンの栽培適地は温暖化ガス排出量に大きく影響され、現在は関東南部以西の太平洋と九州沿岸部に分布する産地が徐々に北上。今世紀半ばには温暖化ガス排出量の想定によらず、現在より内陸や北陸以南の日本海沿岸にまで広がる。一方、温暖化ガス排出が中程度以上では、今世紀末に九州南部の一部や関東南部以西の太平洋沿岸部の気温は栽培の適温よりも高くなった。

 これに対し、アボカドの栽培適地は徐々に拡大、現在のミカン産地の多くがアボカドの栽培適地に置き換わる結果になった。アボカド栽培に適した地域の面積は、温暖化によって今世紀半ばに2.5~3.7倍に、今世紀末には2.4~7.7倍にまで広がって本州などでもアボカド生産が可能になることが分かった。

 農研機構は「現在のミカン産地の存続にとって、地球規模の温暖化ガスの排出量の影響が非常に大きいことを示している」「ミカン栽培からアボカド栽培に転換することは、今世紀末までの適応策のひとつになり続ける」と話している。